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■ 講演内容の概要


講演内容の概要

驚きの味覚体験〜ミラクルフルーツとギムネマ〜
植物を通じて味覚のしくみを理解する)
高校・大学・一般用講演概要
(あくまで概要ですので、実際の講義ではここに記載している内容の2倍以上のことをお話させていただいております。)
PDF版はこちらをご覧下さい。


(お願い:本ページで用いている図は無断で使用しないで下さい。
使用したい場合は島村まで連絡してください。)

1.味を感じる仕組み

味を感じるには食べ物が唾液と混じり水溶液になることが必要である。水溶液となった物質は口の中にある乳頭に取り込まれ、
その中にある花のつぼみのような形をした味蕾
(みらい)で味が判別される。なお、乳頭は舌に4種類あり、有郭乳頭、茸状乳頭、
葉状乳頭、糸状乳頭がある。(ただし、糸状乳頭内だけには味蕾がありません。)味蕾は長さ
0.08mmくらいの大きさである。

図1 乳頭の分布 図2 味蕾

味蕾での味の判別方法は、鍵と鍵穴の関係に例える事ができる。食べ物の成分が鍵で味蕾が鍵穴である。
味にはそれぞれ専用の鍵穴があり、その鍵穴が埋まるとスイッチが入り電気信号として脳に伝えられる。

味蕾は成人でおよそ6000個〜9000個存在するが、ウサギは17000個、牛は24000個、ナマズに至っては100,000個も味蕾が存在する。(ちなみに味蕾の数が多いのは赤ちゃんで、約12000個あります。)
(最近の研究ではなまずの大きさ、種類によって200,000個もあるものもいるようです。)

図3 味覚地図(間違いです) 図4 味蕾のある場所 図5 味の認知の仕組み

2.動物にとっての味覚

草食獣:消化しにくい植物で生きていくために体の仕組みを変化させた。
例:コアラ→すばやく敵から逃げることのできないコアラは、他の動物にとって毒であるユーカリ
の森で生活することで生き延びることができた。

肉食獣:草食獣を食べることで栄養をとるが、獲物を食べる順番はフルコースのように決まっている。
例:ライオン→小腸
(植物のエッセンス)→肝臓、すい臓(ビタミン、ミネラル)→筋肉
上記の例より、生きていく上で役に立つものがおいしい。これが動物にとっての味覚である。

3.人にとっての味覚

基本味 代表的な物質 生物学的意義 舌の感度
甘味 ショ糖 糖のシグナル 低い
塩味 食塩 ミネラルのシグナル やや低い
酸味 クエン酸 腐敗物、熟していない果実のシグナル 高い
苦味 キニーネ 毒物のシグナル 高い
うま味※ グルタミン酸ナトリウム タンパク質のシグナル 低い
※:うま味は全て日本人が発見した。

1908年:グルタミン酸ナトリウム(昆布):池田菊苗博士(東京帝国大学:現在の東京大学)
1913年:イノシン酸ナトリウム(鰹節):小玉新太郎氏(池田博士のお弟子さん)       
1957年:グアニル酸ナトリウム(干ししいたけ):國中明博士(ヤマサ醤油)         

国際的にumami (taste)として、認められたのは1985年→食文化の違いで国際的認知が遅れた。
味は上記の5種類であり、味を系統的に見ると下記の図6のようになる。

図6 食べ物のおいしさと基本味

グルタミン酸 イノシン酸
和食 昆布 鰹節
中華 白菜、長ねぎ 鶏がら
洋食 玉ねぎ 仔牛
図7 うま味の相乗効果

 


7のうまみの相乗効果を利用すると、おいしさは6.5倍〜9倍にもなる。
人間にとっての味覚とは『経験と学習』である。

・好き嫌いのメカニズム
@ 第一印象(人間・動物共通)、A雰囲気(人間のみ)、B経験(人間のみ)

子供の頃の味覚の形成が非常に重要、この際にきちんとした味覚が形成されないと、奇食に走る可能性もある。


4.人にとってのおいしさとは

人間にとってのおいしいとは、下記の4つに分類できる。
@ 生理的欲求に基づくおいしさ:体内で欠乏した栄養素はおいしい。
例:急に甘いものが食べたくなる。スポーツした後に電解質系の飲み物を飲みたくなるなど
A 文化に合致したおいしさ:小さいころから慣れ親しんだ味はおいしい。
例:おふくろの味、食文化の違いなど
B 情報に基づくおいしさ:人間に特有の現象で、安全や美味、健康などの情報が脳内の味覚の処理に影響を及ぼす。
例:ワインの飲み比べ、偽装表示、行列ができる店、賞味期限、風評被害など
しかしながら、情報もパーフェクトではないので、あいまいな一面もある。
C 薬理学的なおいしさ(上記に当てはまらない項目): 『脂』、『香辛料』、『だし』のおいしさなどが当てはまり、薬理学的には報酬効果と言われる。
例:ファストフード、ポテトチップス、香辛料など。

5.味覚障害について

近年、若者の間に味を感じることができないという『味覚異常』という病気がある。
味細胞は20日から30日で生まれ変わるが、その際に亜鉛〔Zn〕が使われる。
この亜鉛〔
Zn〕の不足が味覚異常の原因であり、加工食品、ファストフードなどに頼りすぎると発生しやすい。
ちなみに亜鉛を多く含む食品は海草、そば、貝類、丸ごと食べる魚、お茶(日本茶)などであり、
最近、日本人があまり口にしなくなった食品が多い。この機会に日本食を見直してはいかがですか。


6.味覚修飾物質、味覚修飾植物とは(定義)

味覚修飾物質(taste-modifier)味物質の構造を変えるのではなく、味受容体にはたらいて一時的に味覚機能を変える物質
→食べ物の味を変えるのではなく舌にイタズラをして一時的に味覚を変える物質
味覚修飾植物(taste modifying plants,taste-modifier plants):味覚修飾物質を含有する植物
(植物由来では甘味誘導物質と甘味阻害物質の
2種類がある。他に苦味抑制物質もある。)


7.ミラクルフルーツ、ギムネマ、クルクリゴ、ストロジン、なつめ、ケンポナシの紹介

ミラクルフルーツ:西アフリカ原産、どんぐり程度の赤い実に含まれるミラクリンというタンパク質が酸っぱい物を甘く感じさせる。(効果持続時間:2時間(冷凍果実では1時間)

・クルクリゴ:マレーシア原産、ラッキョウのような実に含まれるクルクリンというタンパク質が酸っぱい物や水を甘く感じさせる。(効果持続時間:1015分)

・ストロジン:マレーシア原産、葉っぱをかじってから冷たい水を飲むとストロジンという配糖体が水を甘く感じさせる。(効果持続時間:30分)

ギムネマ:インド原産、葉っぱ(苦い)をかじってから甘いものを食べると、葉っぱに含まれるギムネマ酸という配糖体が糖分の吸収を妨げ、甘味を感じなくさせる。(効果持続時間:30分)

なつめ、ケンポナシ:日本・中国原産、ギムネマと同様の効果。

ミラクルフルーツ ギムネマ クルクリゴ果実

8.味覚修飾植物の応用(今後の展望)

今回紹介した味覚修飾物質(甘味誘導物質、甘味阻害物質)はナツメ、ケンポナシを除いていずれも熱帯産植物に由来している。
熱帯植物は不思議な作用を有する物質の宝庫と思う。現地の人しか知らない植物や未発見の植物もまだ数多く存在すると考えられる。

近年、糖尿病患者が増加しており、また、肥満が社会問題になっている。これらの人たちには低カロリーで安全な甘味剤が必要とされている。
在、多くの人工甘味剤がその副作用のため使用が制限されている。そこで新しい甘味剤の開発は依然として大きな社会的ニーズがある。
今回紹介した甘味誘導物質が新しい甘味剤として利用される可能性はあるが、そのためにはミラクリンやクルクリンの安定性や大量生産系
の確立が必要であり、今後の研究に期待したい。

20016月より名古屋市の医師と共同で、ミラクルフルーツやギムネマの糖尿病患者への適用を開始しました。これらは薬ではなく、
糖尿病患者の生活習慣改善の一環であるため、すぐに効果がでるわけではないが、このように医療現場での活用が挙げられる。

また、味わうことは五感を総動員するため、糖分がないが甘く感じるケーキを作ることで、糖分はとらずに、ケーキを食べたと言う満足感を感じる
ことができます。そのような応用法も考えられる。