島村のコメント
紀元前、アリストテレスは味は7種類あって、甘味、塩味、酸味、苦味、渋味、辛味、えぐ味があると唱えていました。ちなみに、えぐ味とは竹の子を煮たときに発生するアクのような味です。
現在の研究では味は5種類であることがはっきりしています。下表を参照。この5つの味の混じりあいで辛味、渋味、えぐ味を感じることができる。
基本味 |
代表的な物質 |
生物学的意義 |
舌の感度 |
甘味 |
ショ糖(砂糖) |
糖のシグナル |
低い |
塩味 |
食塩 |
ミネラルのシグナル |
低い |
酸味 |
クエン酸(レモンの酸っぱさ) |
腐敗物のシグナル |
高い |
苦味 |
キニーネ(ヨーロッパの白樺の皮に含まれている毒) |
毒物のシグナル |
高い |
うま味 |
グルタミン酸ナトリウム(昆布、これを人工合成したも
のが味の素です。)
イノシン酸ナトリウム(鰹節)
グアニル酸ナトリウム(干ししいたけ)
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タンパク質のシグナル |
低い |
甘味は糖、塩味はミネラル、うま味はタンパク質のシグナルとして私達の頭の中に生まれつき入っています。これらの物質は私達の体に必要なものですから、少しくらい食べただけでは舌が反応しないようにできています。逆に、酸味は腐敗物、苦味は毒のシグナルとして、これも生まれつき頭の中に入っているため、これらの味の食品を避ける傾向があります。もちろん酸っぱいものや苦いものの全てが腐敗物や毒ではありませんが、知識が少ない小さな子どもの場合には、特にこれらの食品を避ける傾向にあります。
私は人間の味覚は『経験と学習』と考えております。食品の栄養などを知ることで、酸っぱいはずの酢を料理に使ったり、苦いお茶を飲んだりすることができます。裏を返すと、人間の場合は学習(特に情報)に頼る傾向が強いため、例えば、雑誌等でおいしい店が載っていると、お腹をすいているのにもかかわらず、行列してまで食べようとします。もちろん他の動物では考えられないことです。そして、おいしいことを経験すると、その雑誌を信じ、次回掲載された店にも並ぶことでしょう。その繰り返しではないでしょうか。しかし、ここで注意して欲しいのは、雑誌を見て、そのメニューにどんな栄養が含まれているかどうかは考えません。その点を十分に注意する必要があると思います。